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千葉家庭裁判所 平成9年(少)2481号 判決 1997年8月26日

本人 K・K子(昭和51.1.29生)

主文

本人を医療少年院に送致する。

少年院に収容する期間を平成9年8月26日から1年間とする。

理由

(非行事実)

本人は、平成8年1月17日に、毒物及び劇物取締法違反の非行により保護観察に付されたものの、保護観察開始当初から保護司への来訪を怠りがちで、保護観察所や保護者の再三の指導にも従わず、その後もシンナー依存者と交際して一緒にシンナーの吸入を繰り返し、無職の状態を続けたり、家出をしたりしているもので、保護者の正当な監督に服しない性癖があり、犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、自己の徳性を害する行為を続けており、その性格及び環境に照らして、将来毒物及び劇物取締法違反の罪を犯すおそれがある。

(法令の適用)

少年法3条1項3号イ、ハ、ニ

(処遇の理由)

一  本人の生活歴、非行化の原因、経緯等について

本人は、兄や姉とは年齢が離れた末っ子として出生したため、両親から場当たり的に甘やかされて育てられ、必要な躾もなされずに成長し、自我が未熟で社会性の発達が遅れ、自己中心性が目立ち、安易で楽な方向に流れがちな性格や行動傾向が形成されていったものと考えられる。上記のような行動傾向に加え、不良な仲間の影響も受けて、本人は中学校2年生のころから素行が悪くなり、そのころにシンナーの吸引を始め、自ら購入して頻繁に吸うようになった他、自転車窃盗などもみられ、高校入学後も非行性は収まらず、シンナー吸入、バイクや自転車の窃盗、万引き、無免許運転を繰り返し、平成3年12月25日に保護観察決定となって、指導を受けた後も問題性が解消しなかったため、平成4年9月11日に当裁判所により中等少年院送致(一般短期処遇)決定となり、愛光女子学園において矯正教育を受けることとなった。その後平成5年2月に本人は同学園を仮退院したものの、すぐに従前同様に不良交遊を再開させ、シンナー吸引、原付の窃盗や無免許運転などの非行を重ねるようになってしまい、観護措置が再度執られた上、平成7年5月30日に在宅試験観察となり、約7か月間綿密な指導が続けられた後、平成8年1月17日に当裁判所により、保護観察決定となり引き続き指導が継続されることとなった。

ところが、本人は上記保護観察決定後も、当初から保護司宅の来訪を怠るなど指導を軽視し、平成9年3月ころからシンナー依存状態の友人と一緒に再びシンナーを吸引するようになり、無職で家に閉じこもり、週に3回程度の割合で吸入し、同年5月ころからは、シンナーの影響で足がふらつくなどの歩行傷害がみられるようになり、その他に、吐き気、めまい、歯や視力の異常を自覚するようになり、シンナーを吸っていないときにも、家で誰かが話しかけてくるという幻聴体験も持つようになって、精神科の病院を受診することとなったものの(この時、CTスキャンで脳が萎縮していることが判明した)、その後もシンナーを断ち切れない状態であるため、同年8月4日千葉保護観察所長からぐ犯で通告がなされ、再び観護措置が執られたものである。

以上のとおり、本人は中学校2年生のころからシンナー吸引を始め、これまで学校、保護者、裁判所、保護観察所、少年院等の指導を受け続け、在宅試験観察の後保護観察になっても、指導が浸透せず、どうしてもシンナーを断ち切ることができず、そのあげく脳の萎縮をはじめ、歩行障害など重大な身体的異常さえ現われてしまっており、このまま在宅での指導を続けても改善の効果は期待できず、シンナーの害によりますます本人の肉体や精神が蝕まれ、最悪の場合、生命の危機さえ生じかねない状態に陥ることも予想されるため、早急に適切な施設に隔離し、シンナーを遮断させ、医療的な治療とともに、必要な葉害教育等を施す必要性が極めて高いものといえる。

二  本人の性格及び行動傾向について

少年鑑別所、担当調査官、保護者などの見解を総合すると、本人の性格及び行動傾向の特徴としては、(1)精神的に未熟であるため、困難に対する耐性が乏しいこと、(2)漠然とした不安感や空虚感を抱いているため、依存対象を求め、幼稚で甘えた態度を示すこと、(3)現実を回避しようとし、けらけらと笑い転げるなど、軽佻に振る舞い、目先の快楽を求めていくこと、(4)自己に不都合なことを言われると、言い逃れや嘘でごまかそうとすること、(5)おおらかであり、思いやりがある反面、友人に流されやすく、飽きっぽく、約束なども守らないことなどの点が指摘できる。

上記のような性格及び行動傾向が影響し、これまで本人は内面の不安感を一時期でも充たし現実を回避するため、友人に誘われるまま、シンナー吸引を続けてきたものと考えられ、言い逃れや責任転嫁を図ろうとする傾向も強いことから、在宅での指導も十分浸透していなかったものといえ、今後本人には、このような問題性を自覚させ、現実を直視し、自己の行動に対する責任を十分自覚させて、社会性を身に付けさせるような体系的教育が必要であると考えられる。

三  本人の交友関係について

本人が現在親密な交友関係を持っているのは、いずれもシンナーの常習者であり、特にA子(21歳)は、本人宅へシンナーを持ち込んで一緒に吸引している者で、同人との交友関係を断ち切らない限り、今後も一緒に吸引することが予想される。

四  本人の家庭、保護者の監護能力について

本人の家族は、両親と兄(28歳)、姉(25歳)がおり、兄と姉は別居し、本人は両親と同居している。母親はしっかり者であるが、本人に対しては末っ子ということもあり、甘やかして育て、必要な躾も十分施さなかったものと考えられ、父親も穏やかな性格であるが家庭での存在感は薄く、両親はこれまで本人の非行に対して庇う面がみられ、効果的な指導力を発揮できたとは到底いえない。また、両親は現在共稼ぎであり、本人の行動には十分目が行き届かず、昼間は自宅には本人しかいない状態になるため、友人がシンナーを持ってきて一緒に吸い続けることが多くなったものといえ、総じて本人の家庭や保護者による今後の有効な改善のための指導は期待できないものと考えられる。

五  本人の問題認識、内省状況について

本人はシンナーを続けている原因について、友人のA子がシンナーも持って自宅に勝手に入ってきてしまうため、一緒に吸ってしまうということをしきりと審判廷で強調し、自己の非行について、他罰的、責任回避的に捉えてしまっており、また、少年の性格的な面もあるが、終始笑いながら自己の問題行動を述べており、今後シンナーを断つためには、「病院へ行こうと思っている」「鍵を掛けてA子を家に入れないようにする」程度のことしか述べず、その場で思いついたことを言うのみで、深刻さは全く感じられず、シンナーの問題性、自己の身体に悪影響を及ぼしている危機的状況を自覚しているとは到底いえない。

以上のことから、本人の問題認識や内省は深まっているとはいえず、十分な薬害教育や面接等を通じて、可能な限りこの点を深めていくことが必要といえる。

六  処遇の検討

以上の検討した諸点を総合的に考慮すると、もはや在宅の指導では、本人が自力でシンナーを断つことを期待することは到底できず、このままシンナーを吸引し続けると、本人の身心は更に蝕まれ、最悪の場合には生命の危機さえ生じかねないといっても過言ではなく、この際、すみやかに施設に収容し、シンナーやその依存者から本人を完全に離した状態で、薬害教育を施す一方、前述のシンナーの影響による様々な身体的な異常に対する医療的措置を施し、健康を回復させることが、現時点では最も本人の福祉にかなうものと判断した。

そして、収容期間については、本人のこれまでのシンナーの吸引歴の長さ、依存の強さ、指導が浸透しない状況、本人の問題認識の乏しさ等を考慮すると、改善のためには相当な期間が必要と考えられ、保護観察所の意見どおり、収容期間は1年間が相当であると考えられる。

また、本人には、現時点で年齢相応の社会性、自律性、忍耐力等が乏しいため、矯正教育により、その面の教育も十分施す必要性があり、医療少年院における医療措置が終了し、健康が回復された後は、特別少年院において矯正教育がなされることが望ましく、その旨処遇勧告をした次第である。

よって、犯罪者予防更生法42条、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 中嶋功)

〔参考1〕 抗告審(東京高 平9(く)282号 平9.9.22決定)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、本人が提出した抗告申立書に記載されたとおりであるから、これを引用する。抗告の趣意は、要するに、原決定の医療少年院送致の処分は著しく不当である、というのである。

そこで検討すると、本件非行は、平成8年1月17日、毒物及び劇物取締法違反の非行により保護観察に付されたものの、保護司への来訪を怠りがちで、保護観察所や保護者の再三の指導にも従わず、その後もシンナーの吸入を繰り返し、家出をしたりしているもので、保護者の正当な監督に服しない性癖があり、犯罪性のある人又は不道徳な人と交際し、自己の徳性を害する行為を続けており、その性格及び環境に照らして、将来毒物及び劇物取締法違反の罪を犯すおそれがある、というものである。本人は、中学2年生ころからシンナーの吸入を始め、その後も吸入を続けたほか、平成3年12月25日、自転車の窃盗や原動機付き自転車の無免許運転などの非行により保護観察決定となったが、その後も行状が改まらず、平成4年9月11日シンナー所持などの非行により中等少年院送致(一般短期処遇)となり、愛光女子学園において矯正教育を受けた。その後、平成5年2月に同学園を仮退院したものの、すぐに不良交遊を再開させ、シンナー吸入、原動機付き自転車の窃盗や無免許などの非行を重ね、平成7年5月30日付けの在宅試験観察を経て、平成8年1月17日、シンナー所持の非行により、保護観察決定を受けて引き続き保護観察所等により指導が行われていた。ところが、しばらくはシンナー吸入は止めていたものの、平成9年3月ころから友人とともにシンナー吸入を再開し、幻聴を起こすようになり、病院での検査の結果、脳の萎縮も発見されるような状態になったが、その後もシンナーを断ち切れなかった。そのため、同年8月4日、千葉保護観察所長からぐ犯通告がなされ、観護措置が採られた。このように、本人は、保護観察所、少年院等の継続的な指導を受けたにもかかわらず、シンナーを止めることはできず、生活態度も改まらなかった。また、本人の性格や行動傾向として、精神的に未熟で、現実を回避しようとして目先の快楽を求めたり、友人に流されやすいことが従前から指摘されている。さらに、本人は、両親と同居しているが、両親の従前の指導は、十分に行われてきたとはいい難く、今後も改善される見込みは余りない。

以上のような事情にかんがみると、少年に対しては、施設に収容し、シンナーやその依存者から本人を隔離した状態で、薬害教育を行うとともに、身体的な異常に対する医療的措置を施し、健康を回復させることが必要であるから、本人を医療少年院に送致し、併せて医療措置が終了して少年の健康が回復した後は特別少年院において矯正教育がなされることが望ましい旨の処遇勧告をした原裁判所の処分は、その収容期間の点を含めて、相当であるというべきである。

よって、本件抗告は理由がないから、少年法33条1項、少年審判規則50条により、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 長岡哲次 裁判官 山崎学 大澤廣)

参考2 通告書

千保観 第○○号

通告書

平成9年8月4日

千葉家庭裁判所 殿

千葉保護観察所長 ○○

下記の者は、少年法第24条第1項第1号の保護処分により、当保護観察所において保護観察中のところ、新たに同法第3条第1項第3号に揚げる事由があると認めらるれので、犯罪者予防更生法第42条第1項の規定により通告する。

氏名

年齢

K・K子

昭和51年1月29日生

本籍

千葉県市川市○○×丁目××番地

住居

千葉県市川市○○×丁目××番×号

保護者

氏名

年齢

K・I

昭和13年12月10日出生

住居

千葉県市川市○○×丁目××番×号

本人の職業

無職

保護者の職業

運転手

決定裁判所

千葉家庭裁判所

決定の日

平成8年1月17日

保護観察の経過及び成績の推移

別紙1のとおり

通告の理由

別紙2のとおり

必要とする保護処分及びその期間

本人の性格、生活態度を鑑みると社会処遇によっては本人の更生は図れず、少年院において相当期間(1年間)の矯正教育を施す必要があると思料する。

参考事項

添付資料

1 質問調書(甲)本人  謄本 1通

2 質問調書(乙)関係人 謄本 1通

3 電話聴取書(写)      3通

(編略)

別紙1

平成8年

1月17日

保護観察決定。

当庁に母親と出頭、誓約書に署名指印。

担当者に○○保護司を指名。

1月中は本人から担当者に2回電話があった(うち1回は担当者が不在)。しかし担当者から来訪するよう連絡があったにもかかわらず担当者宅に来訪しなかった。

2月6日

本人担当者宅に初来訪(来訪指示書に促されてのもの)。

それまで勤めていた○○(健康センター)は平成8年1月中旬に辞めたとのこと。

△3月4日

本人から主任官に電話があった。内容は

「以前から本人と付き合っていた、B(4号観察中)は暴力団に加入していたのだが、Bは暴力団に追われる立場にあり、そのため警察に保護をしてもらおうとおもいシンナーを吸って警察署に出頭した。Bは罰金になる見込みだが、Bの身柄引受人になりたい。」

というもの。身柄引受人になる必要はなく、ならないほうが良いと助言した。その後しばらく本人は主任官にBの行く末を案じて何度も電話があったがいずれもシンナーを吸って電話を掛けている様子だった。

*後日Bから担当主任官が聞いた話では、Bは暴力団を辞めるに指を詰めなくてはならぬと思い込み、K・K子に鉄アレイを用意させ、指の上に刃物を置きその上から鉄アレイを叩き付け、指を詰めたという。BはK・K子のシンナーを何度も辞めさせようとしたが治らないと言う。

4月14日

本人、担当者宅に来訪。

○○のスナックに勤めていると言う。

4月24日

本人、保護観察の定期駐在場所(○○福祉センター)(以下「定期駐在」という。)に出頭(午前10時に指定していたにもかかわらず、午後2時半頃出頭)。

本人の話では、

「2月に東京都江戸川区○○のスナックに勤務しはじめるが翌月に辞めた。4月から○△の「○○」というスナックに勤めたがボーイが自分に八つ当たりをするので辞めた。昨年11月頃Bの子を妊娠していることが分かった。妊娠4か月だったが親から反対されたのでおろした。自分の姉の結婚式が近かったこともある。後悔はしていない。Bの現住所を教えてほしい。」

という。Bの現住所は教えられないと答えた。本人は椅子の上にひざを抱えて座り煙草を吸うという態度であった。

なお、両親から本人に仕事に就くよう再三指導があったにもかかわらず○△の「○○」というスナックを4月に辞めてから平成9年7月末まで、無職の状況が続いている。

5月

5月は来訪の約束を守らず来訪なし。担当者への電話は1回あり。

6月24日

担当者が本人に電話し来訪を促しても来ないので往訪した。

本人は、現在無職でぶらぶらしているというので担当者は、本人に仕事に就くよう指導した。

6月は来訪なし。

7月

7月は本人来訪しない。担当者への電話もなし。

8月16日

本人の母親から担当者に電話があり「C(当時4号観察中、期間中に毒劇法違反2回)が本人の部屋にきて困る。」という相談があった。

8月は担当者に2回電話で催促された本人来訪しない。

9月12日

担当者が往訪したが本人が鍵をかけ戸を開けず10分くらい押し問答の末やっと開ける。仕事はしていないことなどを話す。

△9月24日

本人から担当者に電話あり興奮して「自分はやっていないのに、ババア(母親のこと)がシンナーをやったと言うので喧嘩をした。これから荷物をまとめて家出をする」と言う。結局この日は父親が本人をドライブに連れて行きなだめた。

10月5日

本人来訪(来訪指示書による督促による)。母親が車で送ってきたので、担当者が母親を招きいれようとしたが車で待っているという。本人は「仕事はしていない、夜の仕事でもしようか。」と言う。話に誠実さがないと、担当者の感想。

11月

本人から担当者に3回電話があったが来訪がなかった。

12月20日

担当者に促され、本人から担当者に電話がある。風邪を引いて寝ていたという。辛そうな話しぶりであった。

平成9年

1月22日

定期駐在に不出頭。午後5時ころ本人から担当者に電話があり風邪のため行けなかったという。

1月は本人から担当者に3回電話があったが来訪はなかった。

2月

2月は本人から担当者に1回電話があったが来訪はなかった。仕事には相変わらず就いていない。

△3月10日

本人から主任官に電話があり、3月19日の定期駐在に出頭するよう説得する。電話の声は明らかにラリっておりシンナーを吸った勢いで電話をしている様子。

▲3月17日

主任官が○○警察署の生活安全課の○○婦人補導員に電話をしたところ「最近K・K子のものと思われるバッグの落とし物があり、その中に本人の住民票と、シンナーが入った瓶が入っていた」との情報を得る。

3月19日

定期駐在で本人とその母親と面接。担当者同伴。本人はげっそり痩せたという印象。本人を別室にやり本人の母親の話を聞く。

母親の話では、「最近また本人はシンナーを吸うようになった。もうどこか施設に入れたほうが良いのではないか。清掃のバイトをやらせてはどうかとも考えている」という。

また「3月4日日本人の大好きだった私の兄のG・Kが亡くなった。その葬式の時に、本人は髪の毛が赤かったので会場には入れなかったがそれが相当不満のようであった。」という。

アルバイトの話を前向きに進めるよう助言。

この日この後、本人は○○警察署にある落とし物を取りに行き、バッグにあったシンナーが自分のであり、A子(1号観察中)と吸引したことを認めた。また覚せい剤も1度使用したことも認めた。同署の生活安全課少年係長から厳しく注意される。

3月

3月に本人の担当者宅への来訪はなし。電話は4回あり。

4月

4月に本人の来訪はなし。電話もなし。

5月17日

担当者往訪。本人血色悪く痩せている。5月28日の定期駐在に出頭するよう指示すると捕まるのではないかと警戒していた。

5月28日

定期駐在への出頭指示を受けたが、無断不出頭。

▲5月31日

○○駅北口付近でシンナーを吸引しているところを通行人にみつかり、○○交番に通報され、警察官に現行犯で検挙される(ただしシンナーの量が不足しており、立件にいたらず、このことは本人・保護者ともに知らない)。

△6月2日

本人から主任官に電話がある。警察に捕まるかどうか心配で掛けてきたもの。シンナーを吸っている様子。本人から担当者に電話がある。シンナーを吸っている様子。

6月5日

主任官、本人から電話聴取。シンナーを吸っている様子。

6月6日

呼出状送付(指定日6月10日)。

△6月7日

本人から担当者に電話がある。シンナーを吸っている様子。

△6月10日

呼出しの当日、本人朝家を飛び出し友達のところに行く。本人から主任官に電話がある。シンナーを吸っている様子。「捕まえるつもりか」などと罵詈雑言。話にならないのでもう来なくてよいと本人に告げる。本人の実父のみ出頭したので質問調書を作成した。父親は少年院に入れたいということだったが、本人が病院に入院してシンナー依存症を直したい旨先ほどの電話で言っていたのでまず入院させることを勧めた。

また主任官が6月13日に往訪することにした。

6月12日

本人○○病院(精神科)で受診。

△6月13日

主任官本人宅に往訪。本人の両親在宅。

居間の床に「病院に入れて直してやろうと思っているのにまだやるのか!!」と書かれた紙が落ちていた。母親に尋ねたところ、昨日本人がシンナーの匂いをさせて帰ってきたのだと言う。母親は本人も病院に入院してシンナーの依存症を直そうという気持ちにやっとなったという。

当職は本人が病院に入院(注)して治療に努めるつもりなら、身柄拘束の処分は控えるがそうでなければ不良措置を考えると母親に告げる。途中本人が帰宅したが当職の話をまともに聞こうとしなかった。途中で本人はタクシーで帰ってきたがその料金は母親が払っており本人がわがままに育っている様子が窺われた。

(注)なお、その後、入院については病院の医師が入院不要と判断し通院による検査を週に1回のペースで続けていた。

7月23日

定期駐在場所に本人から主任官に電話があり「体が具合が悪いからいけない」という。

▲7月30日

本人が船橋市○○のマンションでシンナーを吸引しているところを住民に発見され通報される。○△警察署員に検挙されるも、母親に身柄を受けてもらい家に帰る。本人は、A子も吸っていたが逃げたという。(○△警察署生活安全課の情報)。

呼出状送付(指定日8月4日)

△7月31日

担当者が本人宅の郵便受けに呼出状を入れたところ、同日午後4時頃、本人から担当者宅に電話があったがシンナーを吸っている様子で何を言っているか良く分からない状態だった。しかし呼出しには応ずる旨は聞き取れた。

△は再犯があったと疑われる事項

▲は○○警察署で再犯があったと把握している事項。

別紙2

保護観察の経過及び成績の推移からみると少年は、

1 担当保護司、担当保護観察官の再三の指導にもかかわらず、平成8年3月ころから平成9年7月末まで、シンナー吸引を繰り返しており、自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖があること

(少年法第3条第1項第3号のニに該当)

2 保護観察開始当初から平成9年7月末まで、暴力組織関係者や、シンナー依存者と不良交友を続けており、犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際していること

(少年法第3条第1項第3号のハに該当)

3 保護者の指導にもかかわらず、保護観察開始当初から平成9年7月末までわがまま勝手で放縦な生活を送っていたほか、平成9年5月ころから平成9年7月末まで不就業の状態が続いており、保護者の正当な監督に服さない性癖があること

(少年法第3条第1項第3号のイに該当)

の事実が認められ、本人の性格及び環境に照らして、近い将来毒物及び劇物取締法違反の罪等を犯す虞れがある。

〔参考3〕 処遇勧告書<省略>

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